森田浩之の政治コラム(最新回)

森田浩之の政治コラム

第214回 予算を考える

通常国会で新年度(平成30年度)の予算審議が始まった。数字が多くなって恐縮だが、とても大事な話なので、ぜひおつきあいいただきたい。

税制の枠組みから説明すると、国家予算は無数の小川が合流した大海のようなもので、川上はわれわれの賃金明細である。5000万~6000万人の給与所得者から集められた税金と保険料が最終的に国庫に入る。

賃金明細をご覧いただくとわかるが、われわれは所得税を払った上に、年金保険・健康保険、さらには失業保険・労災保険が天引きされている。

税金は一般財源と言われていて、集められる時には使い道が決められていない。この使い道こそ、国会で決められている。

反対に保険料は最初から使い道が決められている。ゆえに一般財源と混ぜられては困るので「特別会計」に計上される。

毎年の通常国会で審議されるのは、新年度から施行される一般会計予算である。だからここで問題になるのは、税金で言うと、所得税・消費税・法人税などである。

一方、年金の受給・医療費の支払いなどは、特別会計として処理されるので、通常国会の予算審議とは別枠で扱われる。

ただ年金と医療は一般会計にも計上され、それらは税金でまかなわれるので、その分は予算審議のなかで討論される。これは複雑な話なので、また改めて説明しよう。

一般会計予算の総額は、平成30年度は97兆7128億円である。正確な数字よりも構造のほうが大切なので、以後は千億円単位を四捨五入して、兆のみで表示する。ということで出るほう、すなわち歳出の総額は98兆円である。

あとでまた説明するが、ちなみに入るほう、すなわち歳入については、本来すべてを税金でまかなうべきだが、税収は59兆円である。差額の大半は赤字国債に頼っている。

歳出の中身を見ていこう。大きな枠組みから、少しずつ細かいところに入っていくと、一般会計予算の歳出は「政策的経費」と「国債費」に分かれる。前者は政策を実行する際に必要なお金で74兆円、後者は過去の借金の返済費で23兆円である。

政策的経費が税金だけでまかなわれているかどうかが「基礎的財政収支」(プライマリーバランス)である。

政策的経費の中身だが、ここは「一般歳出」と「地方交付税交付金」に分かれる。前者が国政に関わるものであり、後者が地方自治体に配分される。一般歳出の総額は59兆円で、地方交付税交付金は16兆円である。

一般歳出の項目を挙げると、「社会保障」33兆円、「公共事業」6兆円、「文教および科学振興」5兆円、「防衛」5兆円と、9兆円分のその他である(「食料安定供給」「エネルギー対策」「経済協力」など)。

数字をご覧の通り、国レベルの仕事である一般歳出は、社会保障、公共事業、教育、防衛がメインなので、これだけを覚えておけば充分である。くり返すと、それぞれ33兆円、6兆円、5兆円、5兆円である。

社会保障費は年金・医療・介護・福祉のことである。さきほど年金と医療は保険料から支出されているから特別会計に入ると述べていたが、実際のところは、給付される年金・医療は保険料と税金の両方から出ている。

一般会計は「平成~年度」というように、1年間単位で予算が組まれるから、基本的に単年度に集めた税金を、年度内に使うことになっている。

一方、年金積立金や健康保険料は貯めておいて必要なときに使うため、単年度でカラにしてしまうわけにはいかない。加えて、人口構成や国民の通院頻度から、単年度で出ていく年金と医療の費用は最初から決められない。

以上の理由から、一般会計と特別会計を合わせた年金支給額と医療費を正確に知ることはむずかしい。とはいえ、おおよそ1年間に支払われる年金は50兆円くらいで、医療費は40兆円と言われている。

そしてそれぞれの10兆円ずつくらいが、一般会計、つまり税金から支払われている。要するに、年金の40兆円分と、医療の30兆円分が特別会計、つまり保険料から出ている(医療の場合はこれに自己負担が入るから、実際の額はもっと少ない)。

今度は歳入を見よう。一般会計は本来なら全額を税金でまかなうべきだが、税収は59兆円である。詳細は、所得税19兆円、消費税18兆円、法人税12兆円で、その他の小さな税金の合計が10兆円になる。

加えて、政府にも収入があり、印紙の発行や国有地の売却などで5兆円になる。税収と合わせると64兆円だが、歳出の98兆円には34兆円足りず、国債で補っている。

厳密には「赤字」国債、正式には「特例公債」が28兆円で、建設国債が6兆円である。後者はそれで造った施設(橋や道路)は後世の人も使うから、という理由で「赤字」国債としては扱われない。

収支の差は深刻だが、史上最高の税収は1990(平成2)年の60兆円だった。平成30年度の59兆円は、1991(平成3)年の59兆8000億円に次ぐ、第3位の高水準である。

これは私の根拠なき推量だが、おそらく税収はこれからも上がるかもしれないが、劇的な増加は期待できず、60兆円から、せいぜい70兆円が限界のような気がする。

それゆえ、もし予算の収支を合わせたいならば、歳出の構造に踏み込まなければならない。いずれにせよ、以上の話を頭の片隅に置いて、日々のニュースをご覧いただきたい。

(このコラムは毎月1日と15日の月2回。次回は3月1日です。)

【森田浩之プロフィール】

1966年生まれ、東日本国際大学客員教授。フリーの著述家として、政治・経済について執筆・講演する一方、情報通信政策研究会の座長を務めている。NTT労働組合の政治学習会では、全般的な政治・経済に加えて、「これからの労働運動」「若者と政治」「NTTをめぐる規制と情報通信政策の動向」「地方分権時代の政策立案」など、多彩な内容の講演を行なう。著書に『小さな大国イギリス』(東洋経済新報社)、『社会の形而上学』『情報社会のコスモロジー』(共に、日本評論社)など。